今回ご紹介するのは、松田英子著『1万人の夢を分析した研究者が教える今すぐ眠りたくなる夢の話』(2023年、ワニブックス)です。
著者の松田英子氏は、東洋大学社会学部社会心理学科の教授で専門分野は臨床心理学、人格心理学、健康心理学。30年以上の経験を持つ夢の専門家です。本書以外にも『夢を読み解く心理学』(2021年、ディスカバー・トゥエンティワン)、『はじめての明晰夢』(2021年、朝日出版社)などを執筆されています。本書『1万人の夢を分析した研究者が教える今すぐ眠りたくなる夢の話』は、タイトルにもあるように著者の小学生から90代まで1万人以上の夢を収集・分析してきた経験を基に書かれた夢の研究の「最前線」を紹介した本です。
本書は6章立てで構成されており、夢に関するトピックスについて詳しく具体例を数多く挙げて解説しています。
特に印象的だったのは第5章で、「悪夢」と「トラウマの夢」について、その治療法等について書かれています。その中でも特に「イメージリハーサルセラピー」(覚醒時に想起した悪夢にイメージの中で暴露しその筋書きをリスクリプト(rescript)する技法)に書かれている部分が興味深かったです。また、悪夢を見ることのポジティブな意味についても言及されている点が新鮮でした。
ただ、著者が研究者であるということからか、予知夢に対しては否定的な立場であることが読み取れます。この点については私の感覚とは異なると思いました。
いずれにせよ、出版が2023年と比較的最近であり、夢の研究の原点と現点が分かるというのはありがたいです。ここ数年、睡眠に関する書籍は増えていますが、夢に関する書籍はそれほど増えている訳でもなさそうなので、夢について学ぶのに貴重な1冊だといえるでしょう。
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