今回ご紹介するのは、石井ゆかり著『夢を読む』(白泉社、2012年)です。
著者の石井ゆかり氏は1970年生まれ。星占いや星座をテーマにしたエッセイや解説を独特の文体で執筆し、幅広い層から支持を集めています。2000年に開設した個人サイト「筋トレ」(現「石井ゆかりの星読み」)は延べ数千万件から1億件規模のアクセスを集めるなど、長年にわたり多くの読者に親しまれています。2010年刊行の『12星座シリーズ』は累計120万部を突破、さらに著書累計は2020年代に入って520万部を超えるなど、占星術エッセイの分野でベストセラーを数多く生み出しています。詩的であたたかな文体は「占い」の枠を超えて支持され、新聞・雑誌・Webなど幅広いメディアでも執筆活動を行っています。
私がこの本を手に取ったのは、著者が石井ゆかりさんだったからです。「星読み」の石井ゆかりさんが「夢」について書かれている、という点に興味をそそられました。私にとって彼女はあくまでも「星」を読む人で、「夢」を読む人とは思ってもみなかったのです。
ただ、石井ゆかりさんの紡ぐ言葉が私は好きなので、「夢」に関してもどのような言葉を紡いでくれるのか、どんな風に「夢」を語ってくれるのか、興味津々で読み始めました。
本書は大きく3章で構成されています。
第1章はシンボルのおはなし。夢に出てきたものがどんなもの・ことを象徴するのかを紹介しています。
第2章は夢のおはなし。様々な角度から著者が夢を考察したエッセイを集めたものになっています。
そして第3章は著者による夢の解釈の具体例が載っています。全部で156頁、スラスラと読んでしまえる分量です。
この本は、「様々な夢とその解釈をご紹介しながら、『夢からなにが読み取れるのか』を遊ぶように考えた、エッセイ集」(本書4頁)なのだそうです。そして、石井ゆかりさんがこの本を書いたのは、「相手が『星』でなく『夢』であっても、シンボルの世界に遊ぶことに変わりはない、と開き開きなお」ったからだそうです(本書4~5頁)。
私が本書を読んで感じたことを2点述べたいと思います。
1点目は、本書でも「石井ゆかりワールド」は全開で、彼女の文章が好きな人は十分に満足されるだろうと感じました。私自身、石井ゆかりさんの膨大な知識に裏付けられた語彙力、表現力に魅力を感じているのですが、本書も例外ではありません。シンボルについての説明も、夢に関するエッセイも、夢の解釈の具体例も「石井ゆかり色」が色濃く表れています。
2点目は、本書は夢からのメッセージを読み解く入門書としての高い価値を有するということです。自分が見た夢が「吉夢」なのか「凶夢」なのかだけを知りたいという人にはあまり意味はありませんが、自分が見た夢の意味を知りたい、という人にとっては、「夢に出てきたモチーフが一般的にどのような意味を持っているのか」「夢で見た内容と自分の現状がどのように結びついているのか」「自分が見た夢は、どんなメッセージを送っているのか」を知るのに参考となる資料がそれなりに提供されている、と感じました。
本書は石井ゆかりさんの文章が好きな人、あるいは夢からのメッセージを読み解きたいと思っている人にお勧めの1冊といえるでしょう。
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